平成の教訓 改革と愚策の30年
2019
昭和が「激動の時代」であったなら、平成は「激変の時代」であった。小泉政権で大臣を歴任し、郵政民営化政策などの立役者として激変の時代の渦中に身をおいた著者。著者は本書で「平成とは『まだらな30年』だった」と説く。それは、数々の改革と愚策がまだら模様を織り成した時代だった。経済成長率、物価、株価、人口、貧困率……など様々な統計や往時の内幕を交えながら、平成から汲み取れる教訓を考察する。平成の30年を動かしたダイナミズムとは何だったのか。平成を検証することは、次の時代の正しい道標へとつながるだろう。
はじめに
平成の教訓を汲み取り、未来へつなげるために
本当のところ、平成とはどのような時代だったのか
序章 平成とは何だったのか
1989年の企業時価総額世界トップ10と、現在を比較する
圧倒的な成功体験が足を引っ張り続けた30年間
なぜ経済停滞を突破できなかったのか
日本には変われる地力がある
1章 平成30年間は「まだら」な時代 「失われた30年」と見るのは誤りだ 次の時代を見通すには、平成の分析・総括が不可欠
80年代末は、依然としてジャパン・アズ・ナンバーワン
平成1年目の末に、株価は史上最高値3万8915円
バブル経済は、崩壊して初めてバブルだったとわかる
失われた10年、20年、30年というが、正しくは「まだらな30年」だった
平成時代を五つの時期に分けて考察する
第1期は「戸惑い」の7年。 「もう一山くれば」と需要拡大策を連発
「バランスシート不況」には手をつけずバラマキ一辺倒
9年からの10年は第2期の「危機」から第3期の「改革」へ
「改革」の6年で、格差拡大も貧困化も是正
自民党政権の末期から「もっとも失われた」第4期に突入
"脱官僚"で大混乱。マクロ経済政策が存在しなかった第4期
第5期の「再挑戦」で日本経済の景色が一変
平成の終わりこそが、安倍政権の正念場
平成は「先進国へのキャッチアップを忘れた」 時代でもあった
第2章平成時代をクイックレビューする まだら模様は、何がどう織りなしていったか?
88年に世界は大激変。 00年 「トリプル安」も崩壊の予兆とならず
平成景気のピークは9年2月。ここから「バブル崩壊」が始まる
96年、日銀は空前の超円高を放置。 ここから「長いデフレ」が始まる
95年、保険・銀行・証券などの破綻が相次ぎ、危機が本格化
「インターネット」は98年の流行語。 Windows95も登場
97年にアマゾン、3年にグーグルが、 膨大なデータを蓄積しはじめた
01年3月、政府はようやく「緩やかなデフレ」を認定
りそなへの公的資金2兆円弱の注入で、株価は急回復
道路公団と郵政民営化を果たし、16年9月に小泉政権終了 株価は7000円すれすれまで下落。自公から民主へ政権交代
GDP3位転落の日本に311が襲来。 翌年、民主から自公へ政権交代
平成の末期、不適切会計や検査データ改竄など企業不祥事相次ぐ
平成時代、世界は文字どおり“激変”していた
世界のどこかでバブルが必ず起こっている
BRICsのうち中国が「世界の工場」へと飛躍
「インダストリー4.0」 「AI」 「ビッグデータ」が産業を変える
世界の変化は、日本の変化よりも大きく激しかった
第3章平成に「失われたもの」とは何だったのか 私たちは何を失って、何を得たのか
平成に、経済の「力強い成長」が失われた
物価変動を差し引いたGDPで見れば、日本と世界の差は小さい
平成に、世界に大きく遅れをとったのは、「物価」と「人口」が失われたから 平成時代のデフレをどう総括するか
平成は、他国の3倍以上のスピードで「高齢化」が進んだ 「出生率」も、生まれてくる 「赤ん坊の数」も、平成に失われた
少子高齢化は平成のはじめに予見されていたとおりに推移 平成に、驚くべき速度で「家計貯蓄率」が失われていった 平成に、貯蓄投資バランスが変わり、「企業の投資」が失われた
平成時代、大学進学者は「4人に1人」から「2人に1人」 になったが
平成に、大学の「教育力」 「研究力」が失われた
平成に、大規模に失われた 「株価」「地価」は、どうなったか
平成に、「古い銀行」が軒並み姿を消した
アップルやアマゾンのような、画期的で新しい企業が生まれなかった
平成に、企業の「起業家精神」が失われた
平成時代の半ばまで低調だった海外M&Aが、国際化の主役に
平成に、まともな論争が失われ、稚拙な議論が横行した
平成に、メディアの劣化が進み、「メディアの良心」が失われた
第4章 平成に進行した「改革」の内幕 小泉改革の真実と、平成の改革者たち
86年「前川レポート」に始まる、経済改革の動き
93年に細川政権をつくった小沢一郎著『日本改造計画』
93年「平岩レポート」は、経済的規制を「原則自由・例外規制」に 前川~平岩レポートに共通するもの
橋本行革が「中央省庁の再編」を目指した理由
平成に「大官房長官」の時代がやってきた
経済戦略会議が「行政の隠れ蓑」になることを免れた理由
危機の時代ゆえに渇望された「これまでと違う政治リーダー」
「抵抗勢力と凄まじい戦いになる。 一緒に闘ってくれ」
経済財政諮問会議が、財務省主導で骨抜きに?
骨太方針を全面的に書き直して、構造改革を宣言
議事録は速やかに公開。毎回、民間議員ペーパーを作成
予算と政策の議論を分け、予算とマクロ経済の整合性を保つ
自民党総務会が見せた粘り腰、懐の深さ
改革は「バトル」、経済財政諮問会議は「お白洲」
財務省は、やはり賢かった
改革には2種類ある。その順序を間違えてはいけない
不良債権処理は、平成時代に2回あった「非連続の変化」の最初
小泉政権下で財政再建の一歩手前まで改善
基礎的財政収支の黒字化こそ、財政再建の第一歩
消費税を上げなくても、財政再建はできる
R・フェルドマンが分析した日本の病 「CRICサイクル」
最大の問題は、麻生内閣が「骨太2006」を放棄してしまったこと
リアリスト・小泉総理は改革をどうとらえていたか
平成は改革者「受難の時代」だった
「宮内さんからの手紙だ。ああ、俺、会うよ」
平成に「コーポレートガバナンス」をもたらした最大の功労者
プロ野球参入やニッポン放送買収で注目された堀江貴文
「魔女狩り」のように断罪
「みんな電話と騙されてスマホを買った」という慧眼
それまでは銀行の資産査定に基準がなかった
検察が「起訴便宜主義」だから、見せしめや一罰百戒が起こる
第5章 平成に横行した「10の愚策」を検証する―どんな愚策が、成長を鈍らせ、改革を阻んだか
サプライサイドの正常化や強化には、手を着けなかった
公共事業で鉄の三角形は「三方よし」 。しかし「世間よし」は?
第2の愚策は、住専に対する公的資金の注入
万が一、住専にカネを入れるならば、農業予算を使え
第3の愚策は、日本銀行の金融政策ー不況の最大の責任者
株価・地価の下落さなかで金利引き上げ。日銀は「角を矯めて牛を殺した」
日銀は、3年に一度のペースで金融政策の失敗を繰り返した
自分の家の庭先だけを、きれいにしておきたかった
「日銀のバランスシートが大きくなってしまう」「だから何だい?」
日銀の金融政策こそ平成最大の愚策
世界の常識「マンデル=フレミング効果」も聞く耳なし
平成は、「日銀の独立性」が大きく誤解された時代
手段については独立、目標は共通
「日銀は世界最強の中央銀行だ」という皮肉
メディアの論調が日銀に同情的だった本当の理由
重要な情報は、日銀からリークされた
デフレ対策より、とにかく「非伝統的金融政策」をやりたくない
バブル経済と長期不況の検証作業を実現させよ
ポリシー・トゥ・ヘルプ(救済)かポリシー・トゥ・ソルブ(解決)か
第7の愚策は、JAL救済に象徴されるゾンビ企業の延命 JAL問題は競争なきクローニーキャピタリズムを体現していた
「産業再生機構」から「企業再生支援機構」へ
第8、9の愚策は、東日本大震災後の復興構想と増税
第10の愚策は、キャップ制の放棄による歯止めなき歳出拡大
第6章平成が示す、未来への教訓 「非連続の変化」を実現せよ
安倍政権の長期化と、一強体制の功罪
安倍内閣は長期政権のレガシーをどう作る?
増税から財政再建を始める国は、必ず失敗する
日本が北欧諸国を真似るのは非現実的
平成から読みとれる教訓とは
「コンセッション」や「PFI」の時代
政策とは、ことごとく「手順」である
バトルを恐れない強いリーダーよ、いでよ
「明るい縮小戦略」が必要だ
ハイパー特区「スーパーシティ」が未来の起爆剤となる
2050年に向けたキーワードは「非連続の変化」
「人口集約」という国土政策の大転換が起きる
日本人には「やってみなはれ」の心がある
おわりに
激動の昭和、激変の平成